SDGs Challenge MIE

井谷三枝子さん

・・・・・

三重県紀北町に暮らす井谷三枝子さん。御年71歳。
彼女の活動は、一言では言い表せません。

平成18年に設立した手づくり工房・ワーイワイは、
高齢者のいきがいづくりを目的に、
地域の高齢者と共に、人形などを手作りし販売しています。
ワーイワイの仲間は
一人暮らしの方が多く
好きな時にきて作業し、好きな時に帰れるこの場所が
心地よく人と触れ合える
コミュニケーションの場になっています。

新型コロナウィルスによるマスク不足時には
布マスクを1,500枚手作りし、
社会福祉協議会や医療従事者などに寄付をしました。

▲作品を片手に活動を語ってくださる井谷さん

▲たくさんの作品が展示されています

また、井谷さんは数々の防災用アイデアグッズの
開発者でもあります。
なかでも、緊急時に高齢者や身体の不自由な方を運ぶ搬送用具「かけモック」は
特許を取得し、
これまでさまざまなメディアで紹介されてきました。
かけモックの動画はこちら

▲かけモック

▲かけモック使用風景

他にも、内側にタオルや小銭入れなどが収納できる防災頭巾、
焼酎の空ペットボトルを利用したポータブルトイレ、
避難所で使用する、通気性がよくまた足音が小さい布ぞうりなど。
自らアイデアを出し、自らカタチにしています。

▲内側にタオルや小銭入れなどが収納できる防災頭巾

▲焼酎の空ペットボトルを利用したポータブルトイレ

▲手作りの布ぞうり

これら活動の原点は、16年間ヘルパーとして介護に携わった経験です。
誰もが、歳をとってもいきいきと心豊かにいられる居場所をつくりたい、
そんな思いで手づくり工房・ワーイワイを立ち上げました。
その5年後の平成23年3月11日に東日本大震災が発生。
被災者の力になりたい、と
発生２カ月後の５月に東北を訪れ、避難所のボランティア活動に参加しました。
ハンドメイドの指導は現地の方にとても喜ばれ、
その後も11度に渡り東北を訪れ、活動を重ねてきました。
東北で実際に目にした光景は、
その後の活動に大きな影響を及ぼし、
高齢者や身体の不自由な人を守るための防災アイデアグッズの開発を
行うにいたりました。

避難所でみんなが困っていたのはトイレ。
圧倒的にトイレの数が足りなくて、
山に入って、穴を掘って用を足している人もたくさんいてね。
高齢者は、トイレが近いし、
山に登るのもたいへんで、困っとる様子やったわ。

現在、井谷さんが力を入れているのは
「GET READY」の啓蒙活動です。
「GET READY」とは、自動車に災害用備品を積み、
緊急事態時に自らの命を自ら守ろうという取り組みです。
例えば、持病を持っている方であれば
避難グッズに加え、薬も準備。
それがわかるよう、個人情報をまとめたシートも
避難袋に入れておきます。
さらに、自動車には
「避難グッズを積んでいる」しるしとして
GET READYのステッカーを貼付するというもの。
自らを守る準備を整えておけば、
誰かを助けることができます。
一人ひとりの備えが地域を守る力になるのです。

▲車載用避難袋

▲井谷さんがセレクトした車載用避難袋の中身の一例

さらに、「GET READY」は企業の社会貢献にも
活用することができます。
企業向けGET READYステッカーには
「救護用品を乗せています。声をかけてください。」
のメッセージが入っています。
社用車に、避難グッズ・救護用品を常備し、
それを発信すれば、
緊急時に、地域の方のお役に立つことができます。

▲GET READYステッカー

井谷さんの今後の展望は
GET READYに賛同する個人、企業を増やし
万が一の緊急時にも
みんなが助け合い、
日常生活が戻るまでの期間、
誰もができる限り不自由なく、過ごせるようにすることです。

さらに、この取り組みが観光客の安心にもつながるのでは・・・
と井谷さんは言います。

紀北町は自然豊かな町やろ。
観光客の誘致にも力を入れとるんやけど、
町全体が、災害に備えとったら
紀北町を訪れる人も安心やと思うんやわ。

年齢とともに体力の衰えを感じ、
そろそろ活動をやめようと思ったこともあるとのことですが
その目の輝きは衰えていません。

「GET READY」の活動は、
SDGsのテーマ11
住み続けられるまちづくりを　と
テーマ17
パートナーシップで目標を達成しよう
に貢献します。

71歳の女性の思いと挑戦が、
みんなの意識を変えて、
より災害に強いまちづくりの推進に
つながるのではないでしょうか。